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6年制薬学教育と薬剤師


6年制薬学教育と薬剤師


 平成18年度から、薬学部のカリキュラムのうち薬剤師を養成することを主な目的とする課程の修業年限が4年から6年に延長されました(図1)。これにより、薬学部は主として薬剤師養成を目的とする6年制の薬学科と、主として創薬研究者養成を目的とする4年制の薬科学科の2つの教育課程をもつことになりました。また、従来は4年制の薬学部を卒業すれば薬剤師国家試験を受験することが出来ましたが、新制度では原則として6年制のカリキュラムを履修したのみが受験資格を得られるようになりました。

 それではなぜ、修業年限が2年間延長されたのでしょうか。平成15年8月29日に提出された文部科学省の「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」の中間まとめ「薬学教育の改善・充実について」では、薬学教育に期待される役割が、病院や薬局で働く薬剤師の養成に加えて、医薬品の創製に関わる基礎研究、医薬品開発、医薬品製造等に従事する研究者・技術者、衛生化学や薬事行政従事者等、多様な人材の養成であることを踏まえて、薬学教育制度のあり方について次の様に提言されています。

 「医療技術や医薬品の創製・適用における科学技術の進歩、医薬分業の進展など、薬学をめぐる状況が大きく変化してきている中、薬剤師を目指す学生には、基礎的な知識・技術はもとより、豊かな人間性、高い倫理観、医療人としての教養、課題発見能力・問題解決能力、現場で通用する実践力を身につけることが求められている。このため、各大学において教養教育を充実しつつ、モデル・コアカリキュラムに基づく教育を進めるとともに、特に臨床の現場において相当期間の実務実習を行うなど、実学としての医療薬学を十分に学ばせる必要がある。(中略)こういった様々な要請に応えるには、薬学教育の現状の修業年限(4年間)は薬剤師養成には十分な期間とは言えず、今後は、6年間の教育が必要である。」(図2)



図1.薬学部新課程の修業年限と薬剤師国家試験受験資格



図2.6年制薬学教育が目指すもの


 修業年限が2年間延長された主な理由は、安心・安全かつ効率的な薬物療法を実施するために、薬剤師がより大きな責任と役割が期待されているためと言えます。6年制の教育カリキュラムでは、医療人としての倫理・教養、課題発見能力・問題解決能力、そして臨床実践能力を身につけるためのカリキュラムの充実が図られ、病院・薬局における6か月以上の長期実務実習が義務化されています。海外の国々を見ても、多くの国において薬剤師を育成するための教育は6年間です。日本も2年間の修業年限が延長され、臨床教育が充実されたことで、ようやく国際的な水準に近づいたと言えます。

 近年、薬剤師の業務は調剤や医薬品管理といった業務に加え、地域や病院における多職種医療チームの一員として、薬物治療の安心・安全に関わる業務が急速に拡大しています。平成22年4月30日に発出された厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」では、「医療技術の進展とともに薬物療法が高度化しているため、医療の質の向上及び医療安全の確保の観点から、チーム医療において薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが非常に有益である。」と明記されています。薬物治療を適正かつ安全に実施するには、医療薬学に関する科学的基盤の構築と応用が必須であり、そのためには、医療に直接携わる薬剤師だけでなく、大学、製薬企業、行政など薬に関わる全ての職種が連携して医療薬学の進歩・普及を進める必要があります。日本医療薬学会は、医療薬学に関する学理及びその応用についての研究発表、知識の交換、会員相互及び内外の関連学会との連携協力等を通じて、医療薬学を進歩・普及させることで、学術文化の発展と国民の福祉向上を目指しています。