薬剤師の専門性認定制度

 近年、医療の高度化、多様化に伴い医療における薬剤師の役割が大きく変化しています。薬物療法の質の向上や効率化に対する社会からの要望が大きくなる一方で、新しい作用機序をもつ医薬品が多数登場したり、薬物療法の方法が複雑化しています。薬剤師は薬物療法を安全かつ効果的に実施する上で重要な役割を有しています。従来は調剤や医薬品の供給を中心に薬剤部門内における業務に終始することの多かった薬剤師ですが、現在では地域や医療施設など医薬品が用いられるあらゆる場面で薬剤師が必要とされ、多職種医療チームの中で薬の専門家としての役割が求められるようになっています。

 がんの薬物療法は最も進歩が著しい治療分野の一つであり、薬剤師の関与が強く求められます。がん薬物療法の分野では日々新しい治療法が編み出され、生体情報などに基づいた患者個別の治療も行われています。抗がん剤は強い副作用を有することから、投与量や投与方法などの厳密な確認や投与の継続・中止への的確な対応などが求められます。また、投与後に現れる吐き気やしびれなどの副作用を軽減したり、がんそのものの痛みを緩和するための投薬など、複雑な治療管理も必要です。このように高度化が顕著ながん薬物療法を安全かつ効率的に実施するため、平成18年に(社)日本病院薬剤師会によって「がん専門薬剤師制度」が創設され、計222名の「がん専門薬剤師」が誕生しました。平成21年10月から、「がん専門薬剤師制度」は日本医療薬学会に移管し、がん専門薬剤師、がん指導薬剤師、がん専門薬剤師研修施設の認定を開始しました(図1)。さらに、日本医療薬学会の「がん専門薬剤師制度」は、平成22年5月に、薬剤師薬剤師に関する資格として初めて医療法上広告が可能な専門性資格として認められました。がん以外の分野でも、各種団体により認定制度が設立され、その種類は年々増加しています(表1)。日本医療薬学会でも、学術的基盤に立脚した薬の専門家として広い知識と錬磨された技能を備えた薬剤師を認定するため、平成10年度に「認定薬剤師制度」を発足し、これまでに1,100名を超える方々に認定薬剤師を認定し、700名を超える指導薬剤師を委嘱しています。



図1.がん専門薬剤師認定制度規程抜粋(日本医療薬学会)



表1.薬剤師を認定対象とする主な認定制度



図2.専門薬剤師に至るためのラダー(日本学術会議薬学委員会専門薬剤師分科会)


 日本学術会議の薬学委員会専門薬剤師分科会は、専門薬剤師の社会的役割、質の確保と社会への普及についての提言「専門薬剤師の必要性と今後の課題~医療の質の向上を支えるために~(平成20年8月28日)」を公表しました。この提言では「専門薬剤師はチーム医療において医師の負担を分散し安全で安心できる薬物療法を提供するために、薬物療法に関して身に付けた高度な知識・技能を活用し、薬物療法の安全性と有効性の確保に責任をもって行動しなければならない」とし、専門薬剤師・高度専門薬剤師が行うべき業務の具体例も示されています。また、薬学部卒業後の薬剤師のキャリアパスの一つとして「専門薬剤師に至るためのラダー」を提案し、その頂点に相当する高度専門薬剤師は、先端的な薬物療法についての医師との研究協力、専門薬剤師の指導・監督を行うこととしています(図2)。

 専門薬剤師の認定を受けるということは、高度な専門性のある医療従事者としての資質を第三者が保証するということです。日本医療薬学会の認定でも非常に厳しい基準を満たした薬剤師だけに認定が与えられます。認定を取得した薬剤師が活躍することで、医療の質がさらに向上することが期待されます。





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